最強のナレッジ管理法:「Zettelkasten(ツェッテルカステン)」のやり方とは?

Zettelkastenのやり方

自分の知識をどんどんと蓄えて、新しい知識やアイデアを生み出すための方法であるZettelkasten(ツェッテルカステン)を紹介します。

目次

Zettelkastenとは?

とある超絶アウトプットの達人であったドイツの社会学者:ニクラス・ルーマンが使っていたメモ術です。

彼は生涯に50本の書籍と500本の論文を執筆しました。そして彼の死後に発見された未発表の文章は、さらに50本の書籍と550本の論文に相当するものでありました[1]

これだけのアウトプットを支えた手法がZettelkasten(ツェッテルカステン)なのです。

ルーマンは文献で学んだことや思考した知識を小さな紙に、1トピック1枚で書いていました。紙には参照できるように、専用のインデックス番号がつけられています。1つのメモが様々なメモから参照され、組み合わされることで新しいアイデアを生み出せるのでした。

彼はなんと90,000枚以上のメモを書いていたそうです。

僕はいつでもどこでも見たいので場所が限られる紙は難しいと考えていました。しかし現代では便利なデジタルツールがあり、それらは検索性能や持ち運び性に優れています。

なのでルーマンのときのような紙を使わずにも、適切なメモの管理ができるようになっています。

他のノウハウ管理方法との比較

Zettelkastenは学んだ知識とアイデアをまとめるためのシステムです。ここでは、いかにZettelkastenが優秀であるかを他の知識を管理するための方法と比較して説明します。

個人的なノウハウメモ

特定のプロジェクトで使える知識や、仕事の手順書などを自分なりにまとめることを目的としたものです。

仕事を効率的に進めるため、社会人にとっては必須のものだと思います。


しかし、このやり方だと新しいアイデアを生み出すための知識も、特定の活動でしか使われない知識も同じような管理がされてしまうことです。

そのため、埋もれていくメモも多く発生するでしょう。また、メモに書かれているアイデア同士を組み合わせることも困難です。

マインドマップの活用

自分が学んできたことを体系的にまとめることができます。個人のノウハウメモと比べると、知識の流れが明確になります。


しかし、1つのメモが複数の箇所から呼び出すことが困難になるため、アイデアをかけ合わせたり流用したりということができません。

Zettelkastenを使うメリット

Zettelkastenを使うメリットは、ずばり既存の知識同士を結びつけて新たなアイデアを生み出せることにあります。

ジェームス W.ヤング著「アイデアの作り方」によると、アイデアは、「アイデアを出したい分野の知識」と「世の中の一般的な知識」との新しい組み合わせから生まれるとあります[2]

ジェームス W.ヤング (著), 竹内 均 (解説),

後述しますがZettelkastenは主に3つのノートで構成されています。その中でもっとも重要な「Permanent Note」は1つのノートに1トピックのみが記載するため、ヤング氏が提唱する「既存の知識同士を組み合わせてアイデアを生み出す」も実現できる素晴らしい方法なのです!

また、新しいノートを追加するたびに、他に関連するノートが無いかを確認する作業があります。

なので、古いアイデアがどこからも読み出されず形骸化するのを防ぎやすくなっています。

また、アイデア出しでは有名な手法としてブレインストーミングは使ったことがあると思います。しかし、Zettelkastenはそれよりも優れていると言われています。

ブレストでは無関係な単語同士から連想して、新しいアイデアをゼロから生み出す手法です。

しかし、ある研究によると

ブレストを行う人数が多いほど、優れたアイデアの数は減り、トピックの幅も狭まる

という結果があるらしく、ブレストのデメリットになります。

もし、あなたが急にアイデアを必要としたとしてもZettelkastenは役立ちます。

なぜならば数ヶ月前に自分で考えた優れたアイデアが常にメンテナンスされ、いつでも呼び出せる状態で入っているからです[3]

Zettelkastenのノート構成

Zettelkastenで使用する5つのノートを紹介します。

  1. Fleeting Note:一時的な思考用ノート
  2. Literature Note:文献ノート
  3. Permanent Note:上記の2つをもとに知識を生み出すノート

そしてPermanent Noteを支える2つのノートがあります。

4. Structure Note:思考の流れに沿って関連するノートをまとめる
5. Index Note:Structure Noteへの参照のみを貼ったノート

1. Fleeting Note:一時的な思考用ノート

Fleeting Noteは自分が思いついたアイデアや見聞きした出来事をもとに、考えをまとめたり思考したりするためのノートです。

基本的に何を書いても構いません。文章がうまくまとめられている必要もありません。

Fleeting Noteはとにかく思いつくままにアイデアを逃さずに記録しましょう。
もし紙のノートやメモ帳が大好きな人は、Fleeting Noteとしてアナログを使うのは良いかもしれません。

2. Literature Note:文献ノート

Literature Noteは書籍や論文、動画、ブログなどで学んだことを記録していくノートです。

おすすめは、気になったことを自分の言葉に噛み砕いてまとめることです。

自分の言葉で書き直すというのは、しっかりと知識を消化できた状態にするということです。まとめるときは、その文章が記載されているところを読み返せるように、ページ番号も記録しておくと良いでしょう。

あくまで文章をそのまま書き写すのは、文章を正確に引用したい箇所に限定し、最小限にします。

もし、改めて文献を理解しなおしたいときは、ページ番号をもとに書籍を読み直せば良いと思います。

大切なことは自分の中でしっかりと消化して、使えるようにしておくことです。書籍の丸写しではありません。

自分の理解度を測る便利な方法が「自分の言葉で書く」なのです。私はKindleで読むので、そのままKindleのメモに書いていき、最後はツールでLiterature Noteにコピペします。

私はKindle Unlimitedも使いながら文献ノートを作成しています。詳しくはこちら。

3. Permanent Note:上記の2つをもとに知識を生み出すノート

Zettelkastenで最も重要なノート「Permanent Note」を説明します。知識を蓄え、育てていくための永久保存用のノートです。

ポイントは3つです。

(1) いつ誰が読んでも理解できる文章にすること

Fleeting NoteとLiterature Noteから考えた思考をPermanent Noteに清書していきます。Permanent Noteは単体でも人に見せられるレベルの文章で書く必要があります。

ここでの意味は文章量がたくさん必要というのではなく、数ヶ月後の自分が見ても内容を十分に理解できるようにしておけば良いということです。

(2) 1ノートに1トピック

Permanent Noteは単体のノート1枚が、1つの知識を表すように記載します。

ノートがそれ自体で完結できる内容にしておけば、他のノートから参照することも簡単にできます。

具体的には、例えば「有酸素運動は脂肪燃焼効果が高い」というノートには、なぜ有酸素運動が良いのかの理由を書きます。

また、「無酸素運動は基礎代謝を上げる」というノートには無酸素運動である筋トレの効果などを書きます。

それぞれのノートは単体で完結しているので、もし「ダイエット理論」という理論をまとめたいのであれば、有酸素運動のノートと無酸素運動のノートを参照して、それぞれがどのパターンで効果を発揮するのかまとめることができます。

ノートを独立させる利点は、簡単に他から参照させられる点です。

1つの知識が様々なノートから引用されることによって、脳のシナプスのように連結していきます。

これこそが、Zettelkastenが第2の脳と呼ばれる理由です。

新しい知識をPermanent Noteに追加するときの流れは?

  1. 既存の知識で関連するものがないかを探す
  2. 関連するものがあれば既存のノートをアップデートする(必要に合わせてノートを追加する)
  3. 関連するものがなければ新しいノートを追加する。

知識を追加するときには、必ず関連するノートを確認することになりますので、古い知識がそのまま陳腐化していくのを防ぐことができます!

(3) 知識のジャンルごとにフォルダ分けしない

Permanent Noteの重要なポイントとして、フォルダ分けをしないが挙げられます。

基本的にPermanent Noteは1つのフォルダにすべてのノートを格納することが推奨されます。

なぜなら、フォルダで分けてしまうと大切な知識が同一フォルダ内でしか活用されなくなってしまいます。

Zettelkastenは様々な知識をいろんな箇所から参照して新しい知識を生み出すものです。なので、知識を再利用しづらくなるようなフォルダ分けはしないほうが良いです。

少しイメージしにくいかもしれませんが、分野ごとにフォルダ分けをしてしまうと、その分野を見るときにしか他のノートにふれる機会が減ってしまいます。

というのも、フォルダ分けするとノートを追加するときに「最初から関連したジャンルのフォルダ」に入れますよね?すると他のフォルダの中身まで見ず、もし再利用できる知識があっても関連させることができません

例としては、「スポーツ」と「人生哲学」というフォルダがあったとします。スポーツに関することで、人生の考え方に関する知識を得たとします。この知識自体は「人生哲学」という分野でも利用できるものかもしれませんが、「スポーツ」というフォルダに入れてしまうと、「人生哲学」という他の分野からは参照しづらくなることが容易にイメージできると思います。

もしトピックごとに分類したいのであれば、デジタルツールの得意な点であるタグ付けをして管理すればいいのです。全文検索も容易なので分野ごとに分けなくても検索に関する問題は発生しづらいでしょう。

4. Structure Note:思考の流れに沿って関連するノートをまとめる

Permanent Noteが1ノートで1トピックなら、どうやって複雑な知識をまとめるの?

私も同じような疑問を持ちました。

答えは、知識や思考の流れを整理するためのノートを用意するのです。それをStructure Noteと呼びます。構造化ノートですね。

例として、先ほど挙げたダイエットの例がわかりやすいでしょう。

「有酸素運動」「無酸素運動」はそれぞれが単独のノートでした。

これを「ダイエット理論」と名付けた構造化ノートを作成して参照させればいいのです。

参照させるときには、自分の理論や思考の流れを意識してまとめると良いでしょう。

構造化ノートによって、自分だけのオリジナルの知識や理論を作ることができます!

5. Index Note:Structure Noteへの参照のみを貼ったノート

各Structure Noteへの参照だけをはったノートです。それぞれの理論へジャンプしやすくするためのノートであり、Zettelkastenでのエントリポイントとなります。

Zettelkastenの実際の使い方

では、実際に僕が使っているZettelkastenのやり方を紹介します。

僕は「Obsidian」を使用しています。Obsidianを使った具体的なやり方は別で紹介しますので今回は簡単にだけ説明いたします。

https://obsidian.md/

Obsidianは個人の知識を管理するために開発されたツールです。iPhone、Android、Windows、Mac、Linuxなど様々なプラットフォームで活用することができます。なので複数の端末からでも同じツールを使うことができるのでストレスフリーになります。

左側のナビゲーションツリーでは、Index NoteとPermanent Note(日付が入っているもの)がフォルダ分けされることなく、単一フォルダに格納されていることがわかるでしょう。

僕は赤枠「10-Thinking」フォルダをFleeting Noteとして一時的な思考メモの置き場としています。ここでいろいろな書籍などから思考がまとまると、青枠のPermanent Noteへ移動させていくという流れで行っています。

また、パソコンとiPhone、iPadでも連携できるようにしているので通勤時間やちょっとした時間にObisidianを開いてFleeting NoteやPermanent Noteを見直すようにしています。

さいごに

Zettelkastenは優れたアイデア創出方法を追い求めた僕がたどり着いた最適解だと思っています。これまでにたくさんのメモ術やノートテイキングメソッドを勉強してきましたが、Zettelkastenほどシンプルで強力な仕組みはないのではないかと思いました。

また、ZettelkastenにおけるPermanent Noteは1つのノートでも公表できるレベルの記載が求められます。

つまり、アウトプットまでの時間を最小限にしてくれるのです!

僕は始めてから9ヶ月ほどが経ちました。最初はZettelkastenへの理解が乏しく満足のいく運用ができていませんでしたが、色んなWebサイトや書籍で学び自分なりの理解を足していくことでやっと実運用に耐えうるものができました。

Zettelkastenがあなたの役に立てると心の底から信じています。それでは、また!

参考文献

[1]: https://pub.uni-bielefeld.de/download/2942475/2942530/jschmidt_2016_niklas luhmanns card index.pdf, Niklas Luhmann’s Card Index: Thinking Tool, Communication Partner, Publication Machine, Johanness F.K. Schmidt.

[2]: https://amzn.to/3OmyqMu, アイデアのつくり方, ジェームス W.ヤング, CCCメディアハウス, 1988/04/08.

[3]: https://amzn.to/4bf3IhX, TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる, ズンク・アーレン, 日経BP, 2021/10/14.

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